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㈱クラハシ

食品等流通合理化計画・認定出資第1号

出資先のプロフィール

㈱クラハシ

㈱クラハシは1946年に魚問屋として創業した、備後地区では最も歴史のある水産卸事業者であり、2006年に経営難に陥ったが、ニッスイグループの支援を仰ぎ、その後経営再建を果たした。現在は「食品卸売商社」を目指して魚市場を運営する市場事業と水産加工・冷凍食品などを取り扱う商事事業の二本柱で展開をし、順調に増収を続けている。また、2016年7月には沖縄の漁業組合と組み、沖縄マグロのブランド化を目指す6次産業化事業も立ち上げた。

A-FIVEから出資を受けるまでの経緯1

6次産業化事業体への出資をきっかけに、高付加価値流通事業への出資も実現

創業明治29年、120年以上の歴史を持つ㈱クラハシは、瀬戸内海に面した広島県福山市に本社を置く水産食品の卸売商社です。おもに、魚市場を運営する「市場事業」と、水産加工品・冷凍食品などを取り扱う「商事事業」を展開しています。

現在の㈱クラハシの好調を支えるのは、産学官連携による最新技術の開発・導入への積極的な取り組みと、生産者の安定した収入および地球資源の保全を目的とするエシカルな水産流通を追求する明快な姿勢です。A-FIVEでは、先行して、㈱クラハシと沖縄県の伊平屋村漁業協同組合によって2016年に設立されたMarine Link㈱に出資し、6次産業化の支援に携わる中、㈱クラハシが計画する他の事業についても大いなる可能性を見出し、さらなる出資の活用を提案しました。

こうした経緯から、㈱クラハシの子会社・マリンネクスト㈱が共に行う活魚の「備蓄配送事業」を中心とする計画が、農水省の食品等流通等合理化計画に認定されることとなり、A-FIVEからの新たな出資が実現しました。

Marine Linkにて加工されるキハダマグロ

シロギスの試験養殖を行う伊平屋村漁協の陸上養殖施設

A-FIVEから出資を受けるまでの経緯2

産学官の連携で漁獲高を調整するための備蓄技術を研究開発

瀬戸内海には数々の島が存在し、たくさんの生産者(漁師)がいます。しかし、地形の制約から漁港はいずれも小規模で水揚げ量が少ないため、コストの都合で獲れた魚を遠方に持っていくことができず、ほとんどが地元で販売されています。漁が順調に続いてたくさんの魚が獲れても、同種の魚が店頭に3日連続で並べば、消費者は手を伸ばさなくなり、価格が暴落する事態がしばしば起こります。

「漁獲を調整する機能を持つことさえできれば、その問題は解決するだろうと考えたんです」と語るのは、取締役社長の天野文男氏。㈱クラハシ生え抜きの天野社長は、水産物や商品企画についての豊富な知識とノウハウを有し、取引先や産地にも幅広いコネクションも持つ人物です。さらに、創業者のひ孫であり、取締役専務を務める倉橋彩子氏が説明します。

「3年前から広島県の水産海洋技術センターと㈱クラハシが連携するコンソーシアムを立ち上げ、ステップアップのためのさまざまな研究を進めています。そこで研究開発した『低塩分蓄養技術』をつかうことで、天然活魚の備蓄ができるようになりました。」

広島県が特許を持つこの畜養技術について簡単に説明すると、こうなります。

魚は、水を体内に取り入れる際、海水の塩分を排出します。その機能に相当なエネルギーを使うため、捕獲された魚は、網などで負った傷を治すことにエネルギーを回せないまま、水槽内でやがて死んでしまいます。ところが、塩分濃度を少なくすると、塩分を排出するエネルギーを使わずに済み、捕獲した魚の95%が、自分の体力を補いながら傷を癒し、長く生きられることがわかりました。

この技術を使った備蓄を事業化するため、㈱クラハシはマリンネクスト㈱を立ち上げ、2019年3月、三原市糸崎に、5トン水槽2基と濾過設備などを整備した新建屋を1億2000万円をかけて建設。さらに11月にも、5トン水槽と濾過設備を追加で導入し、加工工場も併設した新施設が完成しました。

「生産者から仕入れた活魚をこの施設で備蓄することで、漁獲のないときも新鮮な活魚を安定的に市場に出すことができ、価格の乱高下をおさえることができます。そうして得た利益を生産者へと還元することができるようになりました。」(倉橋専務)

新設されたマリンネクストの工場外観

この水槽に低塩分の海水を入れ活魚の備蓄を行う

A-FIVEから出資を受けるまでの経緯3

商品の付加価値を高める配送技術も導入を開始

魚の配送面についても、㈱クラハシは新たな技術の導入に果敢に挑戦しています。

「あるテレビ番組で、二酸化炭素で魚を眠らせて運ぶという技術を使った水槽のことを知りまして。ぜひ見に行こうと、ある企業をお訪ねしました」(倉橋専務)

二酸化炭素で眠らせた魚は、ストレスがかからず、しかも水槽内で動かないため、魚同士が重ならないよううまくコンテナ内に収めると、通常の倍以上の魚を運ぶことができ、鮮度を保ったまま効率的な配送を実現することができます。

「実用化に際しては、日建リース㈱が、同様の考えに基づきながら独自の特許を取得して開発した装置を利用しています。魚種によって、輸送が非常にうまくいくものとさらに研究が必要なものがありますが、すでに、一定程度の魚種については輸送を開始しています。この技術により、近海魚を活きたまま24時間長期輸送することが可能になり、これまでにない高付加価値を創出できるようになりました。」(天野社長)

マリンネクスト内には最新設備の加工工場も併設

衛生面、効率面を重視した設計で、高鮮度加工を実現

「魚活ボックス」と名付けられた日建リースの輸送装置

二酸化炭素による睡眠輸送で24時間輸送を実現

今後の展開

生産者と資源を守り、ロスなく価値どおりの値で届ける仕組みを

㈱クラハシがこういった新たな挑戦に取り組むのは、何より生産者である漁師の生活の安定化をはかり、水産資源の無駄をなくして環境を守ることで、持続可能な水産漁業の仕組みを構築したいとの強い想いからです。

「我々は荷受け(市場)として生産者から得たアソート状態の魚を、品質ごとにきっちりと仕分け、ロスを出さずに価値通りの値で届けるということに力を注いでいきたい。市場が持つこの“仕分け”という機能、集荷分散の機能はたいへん重要です。今あらためて見直す時期だと思っています。」(天野社長)

「そのようにして得た利益を生産者に還元させることで、生産者の方には、価格の乱高下を気にせず、魚の質やSDGsにある自然環境を守るということに力を尽くしていただき、全体がウィンウィンで回る仕組みを今後も模索していけたらと思います。」(倉橋専務)

人にも環境にも優しい、新たな水産流通の技術開発と仕組みづくりが、海から食卓まで、魚に関わるすべての人を笑顔にする――水産業の新たなビジネスモデルの構築を目指して、㈱クラハシの挑戦は続きます。

VOICE

株式会社クラハシ
代表取締役社長 天野 文男 氏
出資先の声1

A-FIVEの出資で実現した複数の事業で新たな仕組みづくりを

A-FIVEさんとのおつきあいは、沖縄の6次産業化事業を立ち上げる際に、こちらからお訪ねして出資のお願いをしたことをきっかけに始まりました。その際にご覧いただいた事業計画がほかにもいくつかありまして、そちらにも興味を示していただき、再び出資いただくことになり、感謝しています。

今回、食品等流通合理化計画の認定をいただいた事業には、ご説明した「低塩分蓄養技術」「二酸化炭素麻酔による輸送」以外にも、福山大学と連携しての「シロギス」の陸上養殖と、福山市を拠点とする「共同利用型鮮魚仕分けセンター」の整備が含まれています。シロギスの養殖につきましては、現在順調に福山大学との共同研究が進んでおり、沖縄県の伊平屋村漁業協同組合で試験養殖が始まっており、近い将来事業化できる見通しです。「共同利用型鮮魚仕分けセンター」の整備については、重要なプロジェクトとして位置付けていますが、ちょうど当社の本社が入っている福山魚市場が、老朽化のため新設される計画が持ち上がりましたので、現在はその進捗を見守っている状況です。いずれにしましても、A-FIVEさんからの出資を受けて立ち上げたこれらの事業を今後も必ず軌道に乗せ、相乗効果を得ながら、生産者の所得の安定化をまず基本に据え、水産業全体の新たな仕組みの構築に貢献していければと考えています。

株式会社クラハシ
取締役専務 倉橋 彩子 氏
出資先の声2

A-FIVEが出資した企業同士の連携実現にも期待

水産業を取り巻く状況については、率直に申しあげて、現在さまざまなことがマイナスの方向に動いています。今、私たちが比較的元気なうちに次の一手を打ち、イノベーションを起こしていかないと、生き残っていけません。生き抜くことこそが最大の戦力だと考えますので、私どもは産学官連携で新しい技術を開発して、備蓄や養殖事業などに取り組んでいます。そういった事業を起こすためには、当然それなりの先行投資が必要となりますので、A-FIVEさんからの出資が実現してたいへんありがたく思っています。また、A-FIVEさんとのお付き合いの中で、A-FIVEさんが直接出資されている他の企業をご紹介いただくことも多く、先日も、静岡で「やさいバス」「さかなバス」の事業を展開されている㈱エムスクエア・ラボの加藤社長とお会いし、たいへん有意義なお話し合いの場を持つことができました。今後、そういった出資を受ける企業同士でコラボレートして、より大きな価値を生み出していくようなことが実現すればと楽しみにしているところです。