A-FIVE

メニューを開閉する

㈱宇和島海道

活魚と変わらない鮮度を保つブリの冷凍加工品

出資先のプロフィール

㈱宇和島海道

愛媛県西予市に拠点を置く(株)宇和島海道は、地元を拠点にする(株)ダイニチ(養殖事業者・第一次産業)と(株)オンスイ(加工事業者・第二次産業)に、三井物産(株)(総合商社・第三次産業)が加わり、共同出資して設立した六次産業化事業体です。冷凍加工が困難とされてきたブリを、独自技術により血液を100%除去することで、鮮度が高く、品質劣化の少ない冷凍加工品の製造を行っています。

A-FIVEから出資を受けるまでの経緯1

同じ目的を持つ地元2社の合弁事業に、総合商社が参加。

愛媛県の南西端に位置する西予市。みかんの果樹が立ち並ぶ斜面のすぐ下に広がる、青く穏やかな瀬戸内の入り江に、養殖のブリを中心とした冷凍加工品の製造・販売を行う(株)宇和島海道があります。

運営の中心を担うのは、西予市に隣接する宇和島市を拠点とする2社。鮮魚の卸売り、養殖用飼料・資材の販売を行う(株)ダイニチと、魚類冷凍加工品の製造・販売を行う(株)オンスイです。

それぞれに加工工場の建設・増設を検討していたところ、互いの目的が一致することがわかり、合弁事業として工場建設の話を進めたことが(株)宇和島海道設立のきっかけとなりました。さらに、国内外に販売網を持つ大手総合商社の三井物産(株)も計画に加わり、原料供給から加工、販売までを行う六次産業化事業体(株)宇和島海道が誕生しました。

(株)ダイニチが持つ地元養殖業者との強力な関係、(株)オンスイが持つ独自の優れた冷凍加工技術、さらに2社が有する既存の販路に三井物産(株)による国内外の販路も加わり、その事業拡大性が評価され、(株)宇和島海道は伊予銀行を通じて「いよエバーグリーン6次産業化応援ファンド」から50%の出資を受けることとなりました。

この出資の経緯と意義について、代表取締役の玉留一氏はこう語ります。

「三井物産の四国支社とは伊予銀行の紹介で以前から面識がありまして、(株)オンスイとの合弁事業の話をしたところ、非常に前向きに対応していただき、出資も含めた形での参加となりました。ファンドからの出資についても、以前より伊予銀行と加工場について相談をしていたので、話をスムーズに進めることができました。魚の加工場は設備に資金がかかるうえ、利益を生み出すことが難しい事業ですので、50%の資本を出していただけることは大変ありがたいことでした。」

海近くまで迫る斜面の上から見た入り江。(株)宇和島海道の工場社屋は、丸い入り江の岸沿いにある。

沖合いの養殖場から19トン船が入江まで入り、積んできたブリをまずは海中の生け簀に移す。

海中から引き揚げられたブリは、パイプを通って高濃度酸素海水で満たされた陸上水槽に移される。

高濃度酸素水の入った陸上水槽。この中に24時間置くことでブリのストレスがゼロレベルになるという。

6次事業体としての特徴

3つの独自技術で、困難を可能に。

もともと日本有数の養殖ブリの産地として知られるこの地域。新鮮なブリの身は、鮮やかな赤色と白色で見た目も美しく、脂も乗って適度な歯ごたえがあり人気があります。が、一度冷凍して解凍すると変色が激しく、臭みも増すため、これまでは冷凍に適さない魚として知られてきました。

その定説を覆し、品質の高い冷凍加工品を製造しているのが、(株)宇和島海道です。ここで製造される冷凍のブリは、最長で2年間、活魚と同様の鮮度を保つことができ、解凍しても変色せず、生臭さも生じません。女性や子供に好まれ、日本人はもちろん外国人の舌にも合うため、現在、国内のすしチェーンをはじめ、アメリカ、アジア、オーストラリアの和食・寿司チェーンなどへの輸出も伸ばしています。

この高品質なブリの冷凍加工品を、いかにして製造しているのか──それには、(株)宇和島海道が持つ3つの技術が大きく関係しています。

そのひとつは、「高濃度酸素海水」。

19トン船で入り江沿いの工場まで運ばれたブリは、高濃度酸素海水で満たされた工場内の水槽で12時間以上養生されます。(株)宇和島海道で品質管理室長を務める下田和彦さんが理由を説明します。

「高濃度酸素海水の中に入れることで、ブリにかかるストレスをゼロの状態まで持っていくことが目的です。魚にストレスがかかると毛細血管が収縮して、次の血を抜く段階でうまく抜けなくなってしまうことがあるんです。」

2つめの技術が、その血抜きの作業です。(株)オンスイが特許を持つ「超薫冷」と呼ばれる、薫液を使った徹底した血抜きが、(株)宇和島海道のブリの品質を高める要の技術。(株)オンスイの営業部長/加工スーパーバイザーの東海林徹さんが解説します。

「簡単にいえば、透析のようなイメージで、ブリの血液の代わりに薫液を置き換えていくという技術です。もちろん薫液を使っても、身に香りなどはまったく残りません。通常の活締めしたブリは、身に血液が60%くらいの残っている状態で、それが変色や臭みの要因になりますが、当社の技術を使うことで、毛細血管まで100%血液が抜くことができるため、解凍しても変色や臭みのいっさいないブリの冷凍加工が可能になります。」

そして3つめの技術が、「超低温冷凍」。独自の技術で急速冷凍した後、-45度の超低温冷凍庫で保管を行います。

「活魚を15分以内で加工して冷凍まで持っていき、その後、-45度の超低温で冷凍保管することで、活魚と変わらない鮮度を保つことができます。」(下田さん)

ISO22000取得の工場内で、高濃度酸素海水内から出されたブリを、頭部から脊髄にかけて処理をし麻痺させる。

1匹1匹並べられたブリは、血液が100%抜かれ薫液に置き換えられていく。まるで外科手術のよう。

血抜きが完了すると、フィレ(三枚)やロイン(四つ切)に切り分けられ、包装され、急速冷凍される。

(株)宇和島海道品質管理室長の下田さん。(株)ダイニチで魚の営業マンから現職に。

A-FIVEから出資を受けるまでの経緯2

コストの無駄を省くため、自社で超低温冷凍庫を建設

(株)宇和島海道は、工場内に100トンの超低温冷凍庫を保有してますが、それだけでは手狭になり、これまでは川崎や名古屋などの主要大都市にある超低温冷凍庫に輸送して保管を行ってきました。しかし、保管料や入出庫による輸送で費用もかさみ、また、マグロなどを扱う他社との間で保管スペースの争奪戦が起きたりという事態を鑑み、2019年、玉留代表は、自社で500トンの超低温冷凍庫を建設することを決断しました。

(株)宇和島海道から車で30分ほどのところに場所を定め、(株)オンスイの加工場も併設する形で建設された大型超低温冷凍庫は、2019年の10月から稼働を開始しています。

「ブリのスライスは、一旦冷凍したものを切るほうが角が立って美しいんです。これまでは、遠方の冷凍庫から取り寄せて、それを加工し、また遠方の冷凍庫に送り返すということをしていましたけれど、現在は、加工場と冷凍庫が一緒になりましたので、時間的にもコスト的にも格段に無駄が省け、効率的な作業が可能になっています。」(東海林さん)

ファンドからの第二次出資により完成した、500トンの超低温冷凍庫の外観。四国では初めての設備となる。

超低温冷凍庫の内部。本社から車で30分ほどの場所にあるため、輸送や保管コストが大幅に削減可能となる。

(株)オンスイ営業部長であり、特許技術「超冷薫」加工処理スーパーバイザーである東海林さん。

こちらには(株)オンスイの加工場も併設。一度冷凍したブリが美しくスライスされ、再び超低温で保管される。

今後の目標

自社の美味しいブリを、世界に届ける

(株)宇和島海道でのブリの加工は、1匹1匹手作業で行うため、現在は人手が足りず、オーダーの量に完全に応えきれていないことが最大の課題です。工場長を務める浜名裕也さんが今後の目標を語ります。

「今は30人の従業員が働いていますが、オーダーに応えるために、あと10人~20人の増員を図れればと思います。うちのブリは、食べていただければわかりますが、本当にやみつきになるほど美味しいです。ニーズにきちんと答える生産体制を整え、たくさんの方にこのブリを味わっていただくことで、『世界中の食を豊かに』という当社の理念の実践を目指したいと思います。」

日本の6次産業化事業体が生産する品質の高いブリの冷凍加工品に、日本全国、世界各地のたくさんの人々が舌鼓を打つ日も、そう遠くなさそうです。

(株)宇和島工場長を務める浜名さん。従業員を増やし、技術を高めて生産のニーズに早く応えることを目指す。

(株)宇和島海道外観。土地は付近のみかん農園から借りている。周囲の清掃などにもスタッフが気を配る。

VOICE

株式会社宇和島海道
代表取締役 玉留 一 氏
出資先の言葉

A-FIVEの出資で得た事業への高い信頼性。

これまでにも加工場建設の計画は何度か持ち上がっていたのですが、資金面の問題もあり、なかなか実現に至らずにいました。今回、50%という大きな出資をいただき、また、加工場建設に続いて、超低温冷凍倉庫建設においても再びファンドを活用させていただけたことはたいへんありがたく、心から感謝しています。四国では、当社が建設した超低温倉庫が、初めての施設となります。

ファンドを活用することにより、事業への信頼性にお墨付きをいただき、周囲からしっかりした会社であると認知されたことの意義はたいへん大きいと実感しています。

現在は人手の問題があり、まだまだ国内のニーズにも十分に対応できていない状況ですので、少しでも早く生産体制を確立し、まずは国内での販売量を増やすことに注力したいと考えています。

海外に向けては、現在はフィレのみを輸出していますが、ロイン、スライスのニーズも高いため、生産体制確立後には、(株)ダイニチ、(株)オンスイ、三井物産(株)それぞれの販売ルートを生かす形で、海外市場の開拓にも積極的に臨んでまいります。

社名の「宇和島海道」は、司馬遼太郎の大紀行「街道をゆく」にあやかりました。私どもの冷凍加工品が世界に大きく展開していくという夢をこめて名付けたものです。