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㈱トウスイ

大手上場企業も出資し、輸出に取組む6次産業化事業
1次・2次・3次事業者が連携

出資先のプロフィール

㈱トウスイ

㈱トウスイは茨城県神栖市波崎の日本でも屈指の巻き網漁業企業である㈱石田丸漁業が、波崎地区で大手の水産加工業者である㈱津久勝、豊洲市場の大手水産物卸業者の東都水産㈱と組んで、水産事業の国際化を目指す「波崎地区6次産業化推進プロジェクト」の推進母体として設立された。作業効率が追求され、衛生対策・環境対策が徹底された最新工場が本年1月に稼働し、サバ・イワシ等の受入れが始まっている。

A-FIVEから出資を受けるまでの経緯

自港で水揚げ→冷凍加工→輸出の6次化モデル

茨城県の東南端に位置する神栖市・波崎の沖合は、黒潮と親潮がまじり合う好漁場として知られ、波崎魚港はサバやイワシの漁獲量で全国トップクラスを誇ります。

その一方で、波崎地区の漁業者が、利根川を挟んだ隣に位置する水揚げ量日本一の銚子港で水揚げを行うことも少なくなく、波崎の漁業者・水産加工業者にとって、いかに自港の水揚げを増やすかが課題となっていました。

現在、日本で獲れたサバの需要は、アフリカやアジアで大きな伸びを見せ、国内の消費量を上回る状況にあります。もし、輸出に対応した効率のよい冷凍加工場を波崎地区に新設することができれば、減少傾向にある自港の水揚げ量を増加に転じさせ、地元に貢献することができるのではないか──波崎で巻き網船団四系統を有する県内最大の漁業者であり、波崎地区のリーダー的存在である㈱石田丸漁業の石田洋一会長はそう考えました。

とはいえ、水産加工の設備投資には多額の資金が必要とされます。一社が単独で工場新設の計画をすることは容易ではありません。

そこで、石田氏は、同じく波崎で130年にわたり事業を続ける地元大手水産加工業者、㈱津久勝(つくかつ)の社長、津久浦裕之氏に協力を求めました。さらに㈱津久勝と30年以上取引きを続けている大手水産卸会社の東都水産㈱にも打診し、石田丸(一次産業)、津久勝(二次産業)、東都水産(三次産業)の3社が協働する6次産業化プロジェクトが計画されたのです。

計画実現のための設備投資資金の調達には、自己資本の増強が必要との考えから、三社は㈱トウスイを設立し、2018年2月に「六次産業化・地産地消法」に基づく総合化事業計画の認定を受け、2本のサブファンド(「ちば農林漁業6次産業化ファンド」、「常陽大地と海の成長支援ファンド」)から4億円の出資を受けることとなりました。

波崎漁港にほど近い場所にあるトウスイの工場。工場周囲の車両移動スペースも十分に確保されている。

加工場の内部。トラックから卸された水槽がセットされ、魚がローラーをあがっていく。

漁獲した魚を冷却装置と氷により冷やし鮮度を保つ。

工場近くの波崎漁港より高鮮度のままトラックへ積み込む。

出資後の設備計画

ノルウェー製最新式ラインが実現する徹底した省人化

㈱トウスイの設備計画をリードしたのは、地元の大手加工業者である㈱津久勝です。すでに自社に導入済みであったノルウェー製の自動選別機およびパッキングラインを参考に、より改善された仕組みを取り入れ、ライン設置開始からわずか1ヵ月で完全稼働を実現しました。㈱トウスイ社長を務める津久敏和氏(津久勝・津久浦裕之社長の次男)が説明します。

「以前、津久勝でこの装置を取り入れたときには、細かなトラブルの対処法を取得するのに時間がかかり、稼働までに2年を要しました。トウスイでは1ヵ月で稼働でき、設置とインストラクションのために招聘したノルウェーの技術者も、世界で例を見ない早さだと驚いていました。津久勝での経験値があってこそ成し得たことです。」

魚の選別から冷凍保管までの工程のほとんどを自動化したこのラインは、水産加工業に根付く重労働のイメージを覆すものです。漁港から運んだ魚を入れた水槽をセットすると、魚がローラーに乗って運ばれ、あらかじめコンピューターで設定された数値に基づき魚が体幅別に4種類に選別され、それぞれのパッキングラインへと運ばれます。同規格の魚が規定の重量まで集まると、自動で組み立てられた紙製の箱の中に納められ、乾燥防止のためビニールで魚を風呂敷状に包んだあと、上蓋が自動でしまり、箱詰めが完了。この箱は次々と専用ラックにスタックされていき、ラックが満杯になると、そのままリフトで凍結庫へと移動して、マイナス36度で一晩かけて凍結。その後、保管庫に移され出荷を待つという仕組みです。この間、人の手を要する作業はごくわずか。基本的に、人員はトラブルを監視する役目で配置され、力作業は皆無です。

また、このパッキングラインを含めた工場全体の設計・設備は、ヨーロッパ市場への進出を見据え、徹底した「EU HACCP」取得可能仕様を実現しています(「EU HACCP」については、2020年度中の取得を目指しています)。

魚の選別機。青いローラーの幅を変えて魚の体幅ごとに選別を行う。ローラーの幅はコンピュータで調整。

4つに選別された魚は規格ごとにそれぞれのラインへと運ばれ、パッキングエリアへと向かう。

機械について説明する津久浦敏和社長。内部は空間ごとにパネルで仕切られ衛生管理が行き届く。

あらかじめ設定した重量分の魚が、自動で組み立てられた箱の中に納められ、乾燥防止用のビニールで包まれる。

今後の展開

6次化で目指すロールモデル。世界の市場を開拓し、地域に貢献

㈱トウスイで冷凍加工されたサバ、イワシの輸出に対応するべく、東都水産㈱では新たに海外事業部が立ち上げられました。㈱トウスイが2019年1月から約半年間で加工した商品の輸出により、東都水産㈱ではすでに多くの売り上げを得ているといいます。同社の海外事業部のシニアマネージャーを務めて、㈱トウスイに出向し、専務取締役に就く木村康隆氏は、㈱トウスイの未来に向けた決意をこのように語ります。

「6次化の場合、関連業者の利害関係でもめることもあると聞きますが、幸運なことにこの3社は非常に強い信頼関係の中でプロジェクトを推進することができています。6次化のロールモデルとして業界の大きな注目を集めていますから、失敗させるわけにはいきません。」さらに、現在単身赴任して暮らす波崎への視線も忘れていません。「長く続けて地元に定着し、地元に貢献する6次化企業のあり方を示す存在を目指したいと思います。」

11月、いよいよサバの水揚げシーズンを迎え、日に300トンを扱う最新鋭の冷凍加工場が、フル操業を開始します。

魚を入れた箱はラックごと-36度の冷凍室で一晩かけて冷凍された後、この保管庫に移され出荷を待つ。

左から、津久勝社長の津久浦裕之氏、トウスイ社長の津久浦敏和氏と同社取締役で東都水産海外事業部シニアマネージャーも務める木村康隆氏。

VOICE

株式会社トウスイ
代表取締役
津久浦 敏和 氏
出資先の声

A-FIVEの出資で得た大きな信用

父が代表取締役を務める㈱津久勝は、「商いは信用がすべて」という創業者の姿勢を貫き、地元波崎で誠心誠意商売を続けてきました。地元のリーダーである㈱石田丸漁業の石田会長からの、波崎の漁業・水産加工業の振興を目指すプロジェクト参加の打診を断る理由はなく、30年の付き合いになる大手の東都水産㈱の協力を得て、「波崎地区6次産業化推進プロジェクト」がスタートしました。地元のために精いっぱい力を尽くし、必ず成功させるという信念で仕事をしようと父ともよく話をしています。

この会社を、トウスイという東都水産を想起する名前にしたのも父のアイデアです。波崎と縁の薄い東都水産の社員の皆さんにとっても、トウスイという社名を聞けば自社の関連会社という意識が強まり、輸出先開拓のための渉外業務にもモチベーション高く臨んでもらえるという考えからで、実際その効果は得られているようです。

A-FIVEの出資を受けたことで、国に認められた事業であるという信用が得られ、金融機関からの融資がよりスムーズになり、たいへん感謝しています。